まっすぐな視線

鬱彼氏とのお付き合い日記

1013 カミングアウト頑張ったね

目が覚めた瞬間から寂しい。

意識が覚醒すればする程に寂しさが募っていく。

 

記念日に会うことをそっけなく断られ、それすら「意思表示ちゃんと出来てえらい👏」って褒めたのに既読がつかない状況のまま2日が過ぎた。

読んでるのは分かっているし何か返さなきゃと思っても意欲がわかなくて困惑しているであろう状況を想像するものの、それでも情報としてこの対応はあんまりに雑すぎて傷ついていた。

 

本当はもっと優しい気持ちや私を想う愛情があると信じているから、会って話せばそれを感じ取れる筈だと思うんだ。

せめて電話だけでも…。

その気持ちが家を出る支度をしている最中に爆発して、駅に向かうバス待ちでLINEを送った。

「そろそろ声聞きたい🥺」

相手は寝てる時間だと分かっていながら、完全に私都合の朝の早い時間に送信してしまった。

私の心に余裕がなかった。

 

8時、8時半、9時、10時…連絡が来る可能性の高い時間は特に意識して待機した。

それでも既読がつかないまま昼を迎える。

まぁ起きたら読んではいるだろう。

お仕事ならばランチピークに向けて余裕がなくなるであろう時間になると、連絡が来る可能性が一気に下がるのではやる気持ちは落ち着いていく。

 

同じ立場の「鬱病の恋人を持つ人たち」の存在がふと思い浮かんで、知恵袋でもブログでも何でもいいから情報が欲しくなって検索した。

すると書籍に辿り着く。

レビューを見ると救われたとか夢中になって読んだとか高評価が並んでいたのでとても興味を引かれた。

生活圏内の図書館を検索するも取り扱いはなく、仕方ない購入するかと思いかけたけど、Kindle UnitedというAmazonの読書サブスクに手を出すことにした。

 

「LINEは未読。やっと来た返事は"会えない"」

「私は重荷。嫌われたと思っていませんか?」

 

まさに今これじゃん、という突き刺さる宣伝文句。

仕事の片手間にスマホに表示させて気になる項目からパラパラとページをめくっていく。

今の彼の遮断モードと不安を抱える私の構図がまさにそこに描かれていて、やはり先人の存在って大きいなと思いながら強い興味を持って読んだ。

例え状況が何も変わらなかったとしても、同じような状況で同じような不安や悩みを抱えている人がいたと知れるだけで自分の感情が肯定される安心感を得られる。

十分に耐え、彼を受け止め理解しようとし、努力していることを褒めてくれる一文なんかもあって、ほんの少しそれに癒されたりもした。

 

そして1番突き刺さったのがこの一文。

「別れを告げないことが好きだという証です」

 

不安が尽きない中で自然消滅の心配も浮かび、自分の存在が重くなっているかもしれないことを心苦しく思うばかりだった私。

彼からの愛情表現はご無沙汰で、伝えやすい場を設けても無視されている現状に自信を失い始めていた。

でも、この一文には納得出来るものがあって、素直に好意を伝えられない足枷があるような気はしている。

鬱認識した日に打ち明けてくれた「会いに行きたいと思っても」「好意が覚めたと勘違いされたと思われてそうだと思っても」何も出来なかったと言っていた彼を知っているから。

ならばせめてもの「自分から壊しにはこない」が最大級の愛情表現なのかもしれない。

そう思ったら涙がこぼれた。

それ程までに追い詰められている彼の苦しさと、それでも私を好きでいてくれるかもしれない切なさと、どうにも出来ないはがゆさと、色んな想いで心がぎゅっとなった。

 

別れ話をするのもエネルギーを要するから、少し行動力が芽生え始めたら別れを切り出されることがあるかもしれない。

だけど「こんな自分に付き合わせて迷惑ばかりかけて申し訳ないから解放する」という意図であるならば、強い気持ちでそれを跳ね返し「何があっても側にいる」と伝えようと思った。

書籍にそんな内容があってそれを糧に絶対治そうと決意出来たとの一文から強く思い直したんだけど、これは前から思っていたことで。

それを貫くためには私は元気で幸せそうな印象を与えなければ説得力がない。

だからストレスを吐き出すようなツイートをし始めた時にアカウントに鍵をかけて彼が覗きにこれないようにした。(フォローされてないけど料理写真載せた時に教えたので)

上辺の元気では意味がないけど、方向性は着実に固めていきたい。

私は彼から離れる気などないのだから。

 

気になるページだけ繰り返し開いてはそこにあるヒントを元に活かせるように思考を巡らせた。

鬱は「誰も分かってくれない」「自分が全部悪い」でいっぱいになりがちで、私はそれを払拭する行動をとりがちだった。

分かって欲しくて自分の話をするし、自分を肯定してくれそうな人や場所を探した。

でも彼は閉じこもって何も話そうとしない。

本の中にはそんな二極化する人種の違いについても触れられていて、彼はとことん甘えることが苦手で失敗を恥と捉え全部自分1人で解決しようとする…自分とは別のタイプなのだと確信した。

 

鬱の自覚をしてからまだほんの数週間の彼は急性期にあたるようだ。

そういえば「自殺が増えるのは回復期」と聞くし、段階があるのを思い出した。

私は自分の急性期の頃の記憶がほぼない。

多分その時その時を生きることに必死過ぎて記憶する余裕がなかったんだろう。

ただベッドの外が全部危険地帯だと思い恐怖を感じて出られないと医師に告げたのは覚えている。

そんな時に声が聞きたいと我儘を言ったことは、まず不正解だと思った。

 

既読がつかぬまま昼に追いLINEをした。

「やっぱり大丈夫。きっとまだ頭の中ごちゃごちゃして吐き出せるモードじゃないよね、、」

本にあった通り、スタンプ1つなら押しやすいのではないかと、電話しない代わりの要求をした。

彼がよく押してくれる中から「ぎゅー」と「よしよし」をリクエスト。

ただ言われるままにタップして押せばいいだけ。

でも真面目な彼は応えられない罪悪感でそんな平和なスタンプを投げつけるように押せない気配も察してはいた。

何か言葉を添えた上でスタンプをくれることを期待した。

 

何度もLINEの画面を開いては自分の送った言葉を読み返していたけど、17時前に既読がついたのを目撃した。

これは数分以内に返事がくるフラグ。

秒で既読をつけて圧をかけないために、トーク一覧の画面に戻し、読めるようにスマホを横向きにして文字数表示上限を増やして待機。

でも何も送られてこない。

 

通知では内容を把握出来ない画像を添えたのが理由だっただろうか。

インパする日のために用意した2人分のカチューシャと服の写真をやっと送ったのだった。

「楽しみにしてるんだから絶対にこれだけは叶えてよね!」

そんな圧をかけてしまうのは分かりきっていて、ずっと送るタイミングを逃していた写真。

電話しなくていいよと理解を示す風な連絡に添えるには矛盾したものであることは分かっていた。

でも私の気持ちも理解して欲しい、私の希望も知っていて欲しい、そのバランスが思うように取れない。

やっぱり失敗だっただろうか。

 

18時過ぎにやっと連絡がきた。

リクエストしたスタンプはなく、電話についての応答もなく、一方的に彼の近況が2つ書いてあった。

 

親戚の家に行くことになりました。

仕事も無理のないシフトを作ってもらいました

 

ショックだった。

事態は想像より遥かに悪く、私は無力なのだと感じた。

生活を自立出来ない程の限界が来ているということも、会話が成り立っていないことも、私の知らない間に彼は動いていて何も相談して貰えず事後報告であることも、同居相手に親戚を選び私が選ばれなかったことも。

親と疎遠な彼には実質身寄りがなく、現在同居中のお兄さんでは何のサポートにもなってくれなくて困った故に頼った相手なのだろう。

お兄さんとの家には彼の自室がないと聞いていたから、泣きたい時に籠れないプライバシーのない空間は無理があるよね。

過去の会話を頼りに少ない文字数を何とか解釈する。

 

電車の乗換をしながら少し気持ちを落ち着けて穏やかな言葉を探して返事を打つ。

 

症状自覚して環境変えるの一歩前進だね。カミングアウト頑張ったね。

親戚のおうち場所はどのへん?

私が一緒に住んでサポートしてあげられたらよかったなとも思いつつ、生活が少しでも楽になるといいね。

 

とにかく褒める方針。

絶対に責めたり納得いかない衝突心は見せない。

それは実体験からくる理想の対応でとても重要なことだと心得ているから、この返信を打つのは然程大変なことではなく望んで与えたいものだ。

質問文を混ぜたけど当然のようにこれにはもう既読がつかなくなる。

 

伝えた思いやりの言葉以外に沸き上がる感情を自己処理しなければいけない。

スタンプ押すのそんな難しいかぁ…電話出来ないって断る意思表示もやっぱりしんどいかぁ…。

「最近どう?」に対しての返事にはなっているのだけど、私は声を聞きたい方に比重があったからほぼ会話になっていない連絡に意思の疎通の不可能さを実感したことが1番悲しかったのかもしれない。

なんだかすごく落ち込んでしまった。

 

そんな大袈裟に未来を悲観して絶望したわけじゃないけど、なんだかとてもずっしりと重い気持ちになった。

「まあ仕方ないし」と思う。

現実を受け止めて、何でもないふりをして、元気でいようとする。

その矛盾が多分ちょっと歪み始めた。

 

このくらいたいしたことじゃないと思う気持ちと、だいぶ深刻できついなと思う気持ち。

脳と心が喧嘩して強いストレスを実感していた。

暴飲暴食に走る。