まっすぐな視線

鬱彼氏とのお付き合い日記

1007 彼の鬱を認識した日

朝、起きたばかりであろう時間にLINEがきた。

「おはよう!後でLINEします!」

昨夜の電話はやはり寝ていて気付かなかっただけだろうか。

でもあの長文に対して放置していたのは間違いなくて、来る連絡にも期待は出来なかった。

別れを告げられることを覚悟しながら待機した。

 

出勤の支度をして朝からバタバタと仕込みの時間、ランチピークを経て、15時前の手があいたであろう時間に予告通りの連絡が入る。

今日の中でなら最短の誠意ある対応だった。

そこには思いがけないことが綴られていた。

 

ひとつ大きな仕事終わったんだけど俺も人間関係かなりあって相変わらずしんどさもあって、昨日休みやったんやけどほんと死んだように寝てて、いちごに返事しないとって思っても他のこともだけど全く何もする気になれなくて、朝起きても中々仕事に行けなくて。
っていう日々で、もしかしたらほんとに病院行くべきなのかな?って思ってる。
診断結果聞くのが怖くて行けなくて。

何度も仕事終わった後いちごに会いに行こーかなって思うんだけどそれはかなり俺のわがままだしって思ってました。。

 

前半も衝撃ではあるものの、最後の一文の安心感にまず泣いたよね。

なんだよ、気持ちちゃんと私に向いてたんじゃん…。

昨夜あんなに胸張り裂ける想いで泣いたのに、会いたいって思うなら言ってよバカ😭

お休み宣言されて私は受け入れるしかなかったのに、彼氏から解除してくれなかったら永遠に音信不通じゃん、なんで遠慮すんのよ…。

 

「(彼氏)ぃ🥺🥺🥺💗」って打ったら秒で既読がついた。

「今5分とかでもいいから電話してもいい?」って聞いたら「今仕事中で笑」「仕事終わって出来そうなら連絡するねー」と向き合ってくれる姿勢を見せてくれたけど、今すぐ気持ちを伝えたくて文章をポロポロ送信していく。

 

鬱疑惑ということには実は薄々気付いていたことを告げた。

鬱も双極性障害もガッツリ経験している私、異常な程の眠気は自衛本能からくるものであることを察していた。

私自身ナルコレプシーを疑ったこともある程、その症状はお馴染みだったのだ。

「やっぱりそうかな笑 困った、、、」とリアルタイムで返事がくる。

 

取り急ぎ伝えたいことをバーッと送った。

「頑張りすぎないこと」

それを許してくれる環境を固めることが大事だから休職が望ましいこと。

長期的な目で見て何が1番大事か考えて元気で生きるための取捨選択をしていこうということ。

「病院の予約は早めに」

薬の効果は人それぞれだけど、病気を認めることで楽になることもあるし周囲の理解も得やすくなるから通院はアリだという意見。

需要が高くなかなか予約が取れないから早め行動を推奨し、代わりに病院探しお手伝いする旨も告げた。

必要であるなら飲み残しの薬があるからおすそ分けも出来るよと(小声)

 

「ところで今の会いたさとしんどさの比率はどのくらいですか」と仕事終わりに会いに行くことを提案し、既読がつかず無視されていたけど「通知で読んでると思うけどとりあえずおでかけ準備します」と強引に話を進めた(強い)。

好き合っているならば会うのが当たり前なんだ!と突然自信を持つ。

最初はずっと2日置きとか連日のように会っていたのにもう半月も会えてないんだぞ!

「今後そんな頻繁に無茶して会おうとしないから今日だけ顔見せて?🥺」で押し通した🔥

 

連休でお店が混雑しているから上がれるのも遅くなりそうと聞いていたけど、少しでも早く会いたくて自分から遅刻するわけにいかないと駅までヒールで15分走った。

折角シャワー浴びて綺麗にしてきたのに汗ばんでしまった。

でも結局30分以上待った。とてもそわそわした。

どんなリアクションで対面するのがいいのか何度も想像するけど、自分がどんな表情になるのか分からなくてシュミレーションは無駄になった。

 

久しぶりの彼が現れる。

心配してたよと苦笑いで訴える私は彼の名前を呼んで目の前に立った。

頭をぽんぽん撫でてくれたけど、なんだかコミュニケーションがぎこちない。

とにかく会えなかった時間の寂しさを埋めたくて触れたかったけど求め合うようなハグすらなく、いつもあんなに私のことじっと見つめてくる目が私を見ない。

抱き着くとソフトタッチで腰に手をまわしてくれたけど、求めていたのは息が出来ないくらいの力強い抱擁だったからなんだか物足りなかった。

 

手すら繋がず歩き出そうとするから私が彼にくっつく形で手を握ってついていく。

駅までの帰宅ルートを一緒に歩くだけでもいいからって申し出で会いに来たけど、今日は公園に行くでもなく本当に駅に向かわれてちょっとビックリしたり。

でも結局迂回ルートで色んなところをお散歩して、私の終電まで1時間一緒にいてくれた。

 

病名っていうのは診断書を書く時に必要になるからつけるもので、病院に行っても症状にあった薬を試し続けるのが一般的な治療で「あなたは鬱ですよ」って言われることはなかなかないことを伝えた。

看護師の友人は「薬漬けになる前にカウンセリングから始めるのもアリ」だと言ってたことも伝え、私のカウンセリングの経験談や薬の感想を話す。

私は薬の効果を殆ど感じなかったけど、とにかく副作用で眠くなるから起きてると辛いことばっか考えちゃうし寝逃げも一種の回復になるよとか。

継続して通院するなら自立支援制度があることも教えて、今後の展開に必要な知識をまずはシェアしていく。

彼は興味深そうに耳を傾けながらも、副作用でこれ以上眠くなるのはダメだなぁと服薬に抵抗を示していた。

でも「どうしても辛くなったらこれがある」っていう持っているだけのお守りとして、便箋に説明を書いた薬を少し持ってきたのでそっと渡すと彼は素直に受け取った。

 

彼は左腕を見せて「気付いた?時計買ったんだ」と言った。

スマホ見るのが苦痛になっちゃって、でも時間が分からなくなると困るから時計を買ったのだと。

SNSから離れて周囲との連絡を遮断したくなる時が私もあるからなんとなくその感覚は分かるものの、分かるからこそ痛々しく思った。

そして何より私はそのスマホでしか繋がっていないのに、という寂しさで苦笑いでしか返せない。

本当は欲しいやつが別にあったけど高くて買えなかったんだよねって言ってて、実現可能か分からないけど望むものをプレゼントしてあげたくなったりした。

 

口を開いた彼は仕事の愚痴を怒涛の勢いで吐き出し始めた。

大きな会議で、ほぼ名指しのような形で自分に対して「期待してる」と社長が発言したことが許せないようだった。

どんなに頑張ってプレゼンしても頭ごなしに否定して何も通らないのに、皆のいるところで圧をかけてくるというのが彼にとっては怒りを伴う強いプレッシャーになっているようだった。

私が納得いくリアクションをするまで、同じ話を繰り返し訴えていた気がする。

 

周りの人たちも優しく声をかけてくれることもあるけど、心を開いて打ち明けたらその内容が一瞬で職場全体に拡散されて立場が悪くなるように追い込まれてしまったそうで、他の人も優しく声をかけてくれても「どうせ俺から情報を聞き出すために近寄ってるんでしょって思うようになった」と人間不信になっていることを話してくれた。

敵だらけだと思いながら1日過ごすのはさぞしんどいだろう…。

 

出会った頃から今の職場は近いうちに辞めるつもりでいると聞いていたけど、目標としている売上額を達成させて新人育成もある程度落ち着かせて環境を整えてから離脱すると決めていたものの、今の待遇にあまりに納得いかなくてもう諦めたと言っていた。

何を提案しても却下されて同じ目標を達成しようとしていないからやる気を失ったと。

期日は告げていないものの、恐らく勢いで「もう辞めるんで」みたいな伝え方もしたようだった。

部分的に話を聞いているだけでもストレスが凄そうで、そんな環境にいたら誰だって傷付くし意欲を失うよって同調した。

 

人通りの少ない立体駐車場に腰を下ろしてしばらくお話したけど、先客が何組かいて落ち着かなくて場所を移動。

案外普通の道の方が人がいなくて2人きりで静かにお話が出来た。

抱き締めて彼の顔を胸にうずめ「ずっと1人で頑張ってたんだね」ってよしよしした。

ずっと彼の頭を優しく撫でながら頷いて話を聞いていたら、彼の表情が次第に落ち着いて変わっていくのが分かった。

前より更に痩せて、笑顔に力がなくなっていて、見るからに疲弊している…という顔をしていたけれど、話をじっと聞いていたら安心してリラックスしていったようだった。

 

性欲について質問したら、意識してなかったけどずっと1人でもしていないと言っていて、半月会ってないんだよなあとアウトを確信しつつ、鬱になると性欲がなくなることも教えた。

確かに会っても私に触れようとしないし、人気のない道に入ってもスタスタ歩き続けるから引き留めて強引に私がキスをせがんでして貰ったけど軽いフレンチだしで、割としっかりそういう症状を感じる展開ではあった。

でも話してるうちに「一緒にいるとえっちしたくなるもんだね」といたずらっ子の目をしておっぱいを触ったり、舌を絡ませてくるようになったのでホッとしたり。

 

先日、小学校の体育館で料理教室の講師をやる機会があった話もしてくれた。

お茶代くらいにしかならない給料で仕事としては成り立っていないけど、教えるのが好きでとても楽しかったのだとニコニコしながら話していた。

色んなオファーが来ていて、勤務時間が昼夜逆転で過酷そうだけど高給の焼き肉屋の案件なんかも述べつつ、14日に本命のイタリアンのシェフとしての面談があると言う。

今の仕事は何でも出来ますってお酒の専門知識から事務作業や店内の接客も商品開発も全て請け負ってしまったけど、次はシェフ業に専念したいと自分のやりたいことが見えているようだった。

一刻も早く今の劣悪な環境を脱して楽しくお仕事が出来るようになるといいねと願うばかり。

 

お休み宣言はこれで一旦解除にするにしても、鬱は何かと重く捉えてプレッシャーになってしまうから「デートの予定を組むのはしばらくやめよう」と私から提案した。

約束を守らなきゃって気持ちがしんどくなるのが見えていたから、会いたいと思う気持ちが沸いたら可能か不可能かは置いといて伝えて欲しいと。

なるべく動けるように体はあけておくから、会いたいと思った時に会えたら会おうねのスタイルにしようねと。

 

でもお誕生日インパだけは諦められなくて実現の希望を改めて告げた。

彼は「それも楽しめるかなってちょっと心配してて…」とやはり消極的になっていたので「前日のお泊りはなしにしよう。当日も朝から開園待ちして夜まで遊ぶとかじゃなくていいから、レストランの予約してあるお昼に行って夕方帰ってくるくらいの短時間でいいから」と提案すると「がんばる…」とか細い声で答えた。

 

「しばらく迷惑かける…」と申し訳なさそうに言っていた彼にキュンとした。

私に出来ることなら何でもするから、一緒に頑張らせてねって抱き締めながら言った。

 

そんな流れの中でぽそりとお休み宣言に対して「よく受け入れたね」と今更の感想が告げられた。

もっと時間のかかる話だと思ってたしゴネられると思っていたのに、すんなり受け入れられたことに驚いたと。

友達にも驚かれたし「この状況でそんな優しい言葉をかけてあげられるの凄い」とは言われたけど「それ以外に選択肢はないと思った」と私は答えた。

だって彼は疲労のピークにあってキャパオーバーしているのが明らかだったし、ゴネたところで困らせるだけで事態は何も好転しないと思った。

言葉じゃなくて電話したいと言っても無視された以上、私に何の発言権があろうか。

何より「このままじゃダメになりそうです」が効いた。

彼の提案を受け入れればまだ何とかなるのだという希望に賭けただけだった。

 

あの日、デートの約束をドタキャンして距離を置いたことが彼の中で大きな罪悪感になっていて、その後会いたいと思っても自分から言い出せなかったのはその申し訳なさがトラウマのようになっていたのだと聞かされる。

それは仕方のないことだったんだよと、無理して飲み込んだわけではなくちゃんと理解して受け入れていることを伝えた。

疲労ピークだったお休みの前日に無理やり会いに来ようとしてたんだし、それがしんどいことだって分かっていて「来なくていいよ」って言ってあげられなかった私もズルかったと思ってると打ち明けた。

 

彼の為に買ったビールを冷蔵庫に並べて写真を送ったのが実は効いていて「いちごんちのビール飲みに行きたいなって何度も思った」と呟いていた。

蒔いた種は無駄になっていなかった。

会って話しているから聞き出せたことが多い実感に、強引でも今日こうして会いに来て良かったと心から思った。

きっとこんな話LINEの文字では話してくれないだろう。

 

会いたい気持ちがあるなら言ってくれたらどんなに不安が消えたことか…と「もう私に気持ちがなくなっちゃったと思って悲しんでたよ」と言うと「多分そう思われてるんだろうなって思ってた」と言う。

それでも誤解を解くための行動力が起きなくて、何とかしなきゃと思っても何も出来なかったのだと。

それによって私から別れを切り出す可能性だってあったのに、無気力の症状はそんなにも膨れ上がっていたのかと思うとやるせない気持ちになった。

好き合っていても伝聞を阻み、壊しに来るのが鬱なのか。

 

今日みたいに仕事終わりから終電までの1時間まるごと使ってくれなくてもいいから、ほんの少しだけでも負担の少ない時間でいいから呼んで欲しいと言ったけど「でもそれは難しくない?」と受け入れて貰えなそうだった。

私の家から彼の職場まで来る遠さは彼も実体験として分かっている分、労力に見合った面会時間でないと申し訳ないと思ってしまうよね。

寂しいよりはずっとずっといいのに、真面目だからこそ受け入れづらいね。

 

いつも通り駅の改札まで送って貰う。(彼は自転車通勤)

腕を組んで歩いていたら肘でおっぱいをツンツンして「これ久しぶり」とニヤニヤ楽しそう。

下はブラで硬めなので「上からの方が柔らかいよ(笑)」と触らせてみたけど「下からの方が好き」と感触を堪能していらした。

元気で何よりです。

 

1時間前より表情も柔らかくなって距離も縮まって、本当に嬉しかった。

心配なことはたくさんあるけど、彼の気持ちが私に向いているのなら私はまだまだ頑張れそう。

コンビニで買って貰ったハニーミルクティーのペットボトルを大事に持って帰って、幸せの味がしたなって思った。